大判例

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仙台高等裁判所 昭和31年(う)14号 判決

原判決の判決書には裁判をした裁判官の署名押印はあるけれども、その所属裁判所の表示を欠くこと所論のとおりである。そして、右は刑事訴訟規則第五十八条第一項に反する違法をおかしたものであるが、それがために判決が無効となるものではなく、又その判決宣告の公判調書によれば右裁判所は福島地方裁判所郡山支部であることが明かであるから、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明かなものとはいえず、未だ以て原判決破棄の理由となすに足りない。論旨は理由がない。

次に、職権を以て調査するに、原判決は併合罪として起訴せられた詐欺、横領、窃盗、軽犯罪法違反、業務上過失傷害及び道路交通取締法違反の各事実を認定の上、これが法令の適用を示し、以上を併合罪として被告人を懲役三年六月に処しているところ、軽犯罪法違反、業務上過失傷害及び道路交通取締法違反の各罪につき所定刑中いかなる刑を選択したかを判示していないけれども、懲役三年六月を科しているところからみて業務上過失傷害については禁錮刑、道路交通取締法違反については懲役刑を選択したものとみられるが、軽犯罪法違反については所定刑は拘留又は科料であり、且つ拘留又は科料と他の刑とは併科し、二個以上の拘留又は科料はこれを併科するのであるから(刑法第五十三条)、原判決は軽犯罪法違反の罪につき主文においてその刑を遺脱しているわけである。ところで、併合罪として起訴せられた事実につき、判決にその理由を示したに拘らず、主文においてこれに対する刑を遺脱するときは、結局その裁判をしないと同一であつて、審判の請求を受けた事件について判決をしない不法あるものといわなければならない。されば、原判決は審判の請求を受けた軽犯罪法違反の事実につき判決をしなかつた違法をおかしたもので、到底破棄を免れない。

(裁判長裁判官 籠倉正治 裁判官 細野幸雄 裁判官 岡本二郎)

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